研究組織 公募B班

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公募B

研究代表者 林 重彦 京都大学・大学院理学研究科・教授
分子再配向が制御するマンガンクラスターの酸素生成反応の理論的解明
本研究では、我々が独自に開発したハイブリッド分子シミュレーション法を用いて、マンガンクラスタの酸化還元電位やプロトン親和力の高精度計算を行い、構造化学に加えてエネルギー論に基づいた酸素生成反応過程の解明を行う。この計算手法は、反応中心の高精度な非経験的量子化学計算とタンパク質環境の長時間に渡る構造変化に対する分子動力学計算を効率良く組み合わせることにより、高精度な構造モデリングや酸化還元電位などのエネルギー計算を可能にしている。本研究では、光合成系 II(PSII)の酸素発生反応で重要となるS2状態からS4状態へ遷移に伴う様々な分子構造の電子状態やプロトン化状態の自由エネルギーを計算することにより、酸素発生反応の分子機構を明らかにする。更に、人工マンガンクラスタ錯体における酸素発生反応の解析を行い、その分子機構をPSII と比較することにより、PSII の変異体や人工光合成系設計への提案を行う。
 
研究代表者 恩田 健 九州大学・大学院理学研究院・教授
研究協力者 宮田 潔志 九州大学・大学院理学研究院・助教 
実時間状態選別的解析手段による天然および人工光合成過程の解明
天然および人工光合成過程は、多くの化学種が関与した多光子、多電子過程である。そのため、そのメカニズムを理解し、高効率で安価な光合成系を人工的に構築することは依然として困難である。本研究では、そのような系に対し、実時間で化学種およびその状態を選別して測定が可能な各種時間分解振動分光を用い、本領域の他のグループとの緊密な協力の下、主要な光合成過程の機構解明を目的とする。具体的には(1)CO2還元および水酸化の触媒反応機構、(2)クロロフィルのエネルギー散逸機構、(3)光増感剤における配位子構造制御、(4)人工的電子伝達系における電子移動過程、(5)各種半導体-金属錯体光触媒における反応メカニズムなどの解明をめざす。これらの結果を系統的、総合的に理解することにより、複雑な光合成過程の理解、それに基づく人工光合成系の開発に貢献する。
 
研究代表者 村上 直也 九州工業大学・大学院工学研究院・准教授
光音響効果を用いた光触媒反応の「真の」量子効率測定
量子効率は,半導体光触媒の性能を表す重要な指標でありながら,吸収光子量の 把握が難しいが故に「見かけの」量子効率に置き換えられて評価されてきた.本研究は, 光音響分光(PAS)分析と光触媒反応系を組み合わせることによって,光触媒反応に 由来する熱量変化を解析し,懸濁系光触媒反応の「真の」量子効率を測定することの できるシステムを確立する.また,様々な光触媒反応に対し,本手法が適用できることを 実証する.
               
研究代表者 小澄 大輔 熊本大学・産業ナノマテリアル研究所・准教授
極限的時間分解分光による光合成機能の分子レベル解明
本研究提案では、光合成光捕集アンテナにおける超効率的なエネルギー伝達を極限的時間スケールかつ分子レベルで解明することを試みます。近赤外サブ10フェムト秒光パルスを用いた超高速分光手法を駆使することにより、光捕集アンテナに結合 する色素分子間電子・振動コヒーレンスを実時間で計測します。光捕集アンテナタンパク質に結合する色素分子間相互作用の時間発展を極限的な時間スケールで解明することにより、新たな基礎理論の構築、超効率的人工光捕集アンテナ設計に向けた 基盤技術の構築に貢献してゆきます。
                 
研究代表者 長澤 裕 立命館大学・生命科学部・教授
光合成初期過程における迷路問題の解明とエネルギー・電子移動経路の制御
植物等が行う光合成系の初期過程では、まず光捕集アンテナ群が太陽光を捕獲し、そのエネルギーが反応中心(RC)まで運ばれて電荷分離反応が起こる。この際、励起子の波動関数は複数のアンテナ分子に渡ってコヒーレントに非局在化するとされる。これによりRCまでの最適経路が量子論的に探索され、最終的なデコヒーレンスによりRCにエネルギーが収束すると考えられている。(光合成系の迷路問題)本研究の目的は、これら光捕集アンテナ複合体やRCにおける光合成初期過程に関して、フェムト秒時間分解過渡吸収スペクトル測定等の超高速非線形分光法により、量子論的迷路問題を解明し、光合成を制御することである。とくに、人工的に修飾したバイオハイブリッド光捕集蛋白質複合体を用いてエネルギー移動経路を最適化し、RC複合体内の電荷分離メカニズムを解明し、天然の高効率な光合成機構を模倣した人工光エネルギー変換系への応用の基礎理論を築く。
                        
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